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旅のレポート「アート体験プログラム~碧を探しに~」
〜碧の街 モナコへ、そしてルネッサンス発祥の地 フィレンツェへ〜

地中海の街、モナコ公国。
モナコは周囲三方をフランスに囲まれた、世界で2番目に小さな国家です。人口約3万人、面積わずか2平方kmという、皇居の二倍程度の国です。温暖な気候に恵まれ、世界的な保養・観光地として知られています。かつてグレース・ケリーさんが王妃になったことでも大きな話題となりました。
旅するクジラのはじめての海外の旅は、このモナコを訪れるところから始まりました。

今回の旅の目的は、東北の子ども達に、南仏の鮮やかな色彩を感じてもらい、今まで体験したことのない「碧」を探したり、ルネッサンスの巨匠の作品の中から色を見つけたりといった、色に対する認識を新たにしてもらうことでした。“色の冒険”の旅です。

ご参加いただいたのは、女川の瑞季さん(18歳)、南三陸の美優さん(12歳)、あゆみさん(10歳)の3名です。
本イベントを実現するにあたって、環境省 大臣官房 廃棄物・リサイクル対策部の布施さんには何から何まで大変お世話になりました。この場をお借りして御礼申し上げます。


いざ出発・・・

モナコは、ヨーロッパのアートの歴史の中で、数多くの芸術家を惹き付けてきた街のひとつです。未来を担う子どもたちの心に、将来大きな花を咲かせるアートの種を蒔くために、私たちは日本を旅立ちました。

モナコ公国

しかし、地中海に向けた旅は、簡単には始まりません。出発の日の朝に乗る予定になっていた飛行機がトラブルで翌日に遅延。そこで急遽、別の便に変更し、ようやく成田から飛び立つことができたのは、半日遅れの夜になってからのことでした。ここでの予想外の待ち時間と、機内での長旅は子どもたちに大きな疲れをもたらしましたが、モナコで待っていたのは、コート・ダジュールの素晴らしい青い海でした。日本では見ることのできない深い碧が、子どもたちの目を引きつけてやみません。

 

思いがけないモナコ公妃への拝謁

そして、着いた直後に訪問したのがモナコ公国の王室です。
そこで思いもかけずにお会いすることができたのが、王室のシャルレーヌ公妃(Princesse Charlène de Monaco)です。公妃は、現モナコ大公のアルベール2世の奥様です。(ちなみにアルベール2世のお母様は、あのグレース・ケリーさんです)
モナコに碧を探しにきたとお伝えすると、シャルレーヌ公妃は「では、王室の中を見てみる?」とおっしゃっていただき、敷地内にある装飾品の鑑賞に加え、予定時間をはるかにオーバーして庭園を案内いただくことになりました。この庭園はとても立派な日本庭園で、日本から取り寄せたという植木などもたくさんありました。モナコが日本に対して好意を寄せていただいていることが良く分かります。

モナコ公国の王室にて

この時の模様は翌日の現地の新聞でも写真入りで紹介されました。この新聞を見て初めて知って驚いたのは、ヨーロッパでは、被災した東北のことをすべて「Fukushima」と呼んでいるということでした。遠く離れているので仕方ないのかもしれませんが、私たちひとりひとりがもっと詳しくお話ししていく必要があるのだと思った出来事でした。

こうして、普段は見られないモナコの美しい景色のひとつを見せていただけたことの感謝の気持ちを公妃に丁寧にお伝えして、私たちは王室を後にしました。

 

そして夕方、ホテルに到着して、ようやくホッとできるかなと思った子どもたちに、少し時間をもらって、プリンセスに会った時の気持ちを、その感動が薄れないうちに絵にしてもらいました。それぞれが、モナコの初日に王室を訪れる機会に恵まれ、素晴らしい王室を見学させていただけたその気持ちを、感じるままに描いてくれました。

 

アートスクール&消防士たちとのひととき

翌2日目は大変なハード・スケジュールでした。午前中にアートスクールおよびモナコ市庁舎を訪問します。 アートスクール(École Supérieure d’Arts Plastiques de la Ville de Monaco)では、まず校長先生からスクールの概要をお話いただき、陶芸の授業や舞台装置/舞台衣装等のデザイン施設を案内していただきました。また、生徒が制作中の作品も見せていただくことができ、昨日に引き続いて未知のアートとの素敵な出会いに恵まれました。
出版予定の生徒の絵画集を見せていただいた時は、その繊細な色使いに、思わず「きれい!素敵!」という喜びの声があがりました。

 

そして、市庁舎を訪問してモナコ市長にお会いした後、昼前に訪れたのが、モナコの消防署です。

モナコ消防署は、震災があった直後に、日本に十数名の消防士の方を派遣してくれました。同署にとって、海外にレスキューを目的として署員を派遣したのは史上初めてのことなのだそうです。今回の訪問は、このことに対しての御礼を伝えたいという気持ちも強くありました。
消防署には時間どおりに到着したのですが、ここでのお出迎えには本当にビックリしました。

まず、入り口で待っていただいていた所長さんにご挨拶して、中へと案内されたのですが、エントランスからご用意いただいている部屋までの途中の廊下の両サイドに、署員全員の方がズラリと整列し、敬礼で迎え入れてくれたのです。
署長さんに、どうしてこんなお出迎えをしてくれるのですかと聞くと、「私たちが支援に出向いていったことに対して、わざわざ日本から会いに来てくれた皆さんに敬意を表するためです。署員にも、これが日本人の尊厳であると説明しています」とのこと。大変感動しました。
でも、敬礼した署員の皆様の前を歩くのは、さすがに少し緊張しました。
今回の旅に一緒に同行された、緊急災害支援活動を行っている「特定非営利活動法人チームレスキュー」の小野さんからも、署員の皆様に感謝の言葉をお伝えしました。

 

レセプションでパフォーマンスのお手伝い

その日の夜は、現地のアーティストや関係者にお集まりいただいて、日本庭園にて前野先生のフラワーパフォーマンスのレセプションを開催しました。
このレセプションでは、前野先生が日本のいけばなの作品をフラワーパフォーマンスとして表現するのと同時に、南三陸町の子供達が瓦礫のパネルに描いた当時の作品の一部を展示しました。
これらの作品は、がれき処理の啓発を行うために、環境省の協力の下で前野先生のいけばなの哲学がベースとなりスタートした活動『旅するクジラ』の最初のイベントで、南三陸町の子どもたちが瓦礫のパネルに描いたものです。
その作品を子どもたち自身からご来場いただいた皆さんにご説明させていただきました。

その後、前野先生による生け花のパフォーマンスを披露したのですが、この時は、子どもたちが先生に花材をひとつずつ渡していくという形でパフォーマンスのお手伝いを行いました。こうした経験も、彼女たちにとってはかなりの緊張だったとは思いますが、将来アーティストとして活躍していくために大変有益だったと思います。

 

モナコを感じる

3日目は、初日から緊張が続く気持ちをほぐしてもらうためにも、モナコ市内を観光してもらうことにしました。
当日は生憎と一日曇り空だったのですが、エズ村から見た地中海の碧い海、ラ・テュルビーという高い崖の上からの絶景など、色を探し求める子どもたちにとって、どれも非常に印象深いものとなりました。特に、海洋博物館の屋上からみた海の広さは生涯忘れられない景色になったそうです。

 

フィレンツェのビアンコ財団

翌日は、イタリア フィレンツェに移動し、デル・ビアンコ財団にて夕方からレセプションに参加しました。
同財団は、フィレンツェのホテルグループ「Viva hotels」のオーナーであるパオロ・デル・ビアンコさんが1998年に設立した、フィレンツェを本拠地とする財団です。ビアンコさんは、福井で開催された里山国際会議で前野先生と出会って以来、先生のアートを支援する活動を続けていただいています。
今回、モナコに行くことを伝えると、「それならば必ずフィレンツェに寄りなさい」とお誘いを受け、レセプションを催していただくことになりました。
会場では、モナコと同様に子どもたちの作品をパネル展示でご紹介するとともに、前野先生による生け花のパフォーマンスを披露しました。もちろんここでも、子どもたちは前野先生にタイミングよく花材を受け渡すお手伝い役を手伝っていただきました。

 

ルネッサンスの歴史を訪ねて

そして帰国の前日は、いよいよフィレンツェの街を巡ります。
フィレンツェは、ルネッサンス文化が開花した芸術の都として知られており、中世からの建物が数多く残る美しい街並から、花の都とも呼ばれています。
ピッティ宮殿、ヴェッキオ橋、シニョーリア広場など様々な歴史的建造物を見て、最後にアカデミア美術館を訪問しました。この美術館には、ミケランジェロの傑作と言われる、かの有名な「ダヴィデ像」があり、他にも14世紀から18世紀までのヴェネツィア派絵画などが収蔵されています。

 

ここでも、前野先生と一緒に色の冒険です。アート作品の中から碧を探して、次に赤や黄色も・・・ ルネッサンスの古典の匂いを感じられるたくさんの作品を目の当たりにして、子どもたちの興味は尽きることがありませんでした。

 

フィレンツェでの2日間、夜の食事はちょっと贅沢にイタリア料理です。みんな慣れないながらも、フォークとナイフを使って美味しいお料理の数々を、ワイワイと盛り上がりながら存分に楽しみました。

 

さて、ご報告は以上です。
この他にもいろいろなことがあった旅でした。このスペースではとても全部を紹介しきれないほどの充実とハプニング続出の旅行でしたが、アートを目指そうと思う子どもたちにとっては、すべてが糧となる、何ひとつムダの無い経験だったと思います。きっと彼女たちの将来に向けての成長に役立ってくれる体験になるものと祈っています。
参加した子どもたちとは、これからまた改めて再会し、旅で感じたことなどをフィードバックしてもらうとともに、前野先生からも長期的にフォローアップしていく予定です。

 

旅するクジラでは、これからもこうしたアート体験プログラムをどんどん企画していきたいと思っています。引き続きご支援のほど宜しくお願いいたします。

(文責:旅するクジラ 事務局)